Seiya Suzuki 鈴木誠也

「神ってる」と言われたのももう10年近く前。大谷選手の同級生であったり、守備で目立つエラーをしたりということもあって過小評価されがちだが、守備指標はそれほど悪くはなく、打撃に関してはMLBでクリーンナップを任されるほどの実力者。

このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

目次

概要

タッカー選手をカブスが獲得したので2025年度はDHメインと言われていますが、2024年度のカブスでは間違いなくNo.1の打者。2024年は三振がやや増えたものの、ナショナルリーグで10位以内に入っている数値(打率、三塁打、出塁率、長打率、OPS)も多く、リーグ屈指の成績です。

ですので、チームとしては「守れないからDHで」というよりは「打撃能力からDHとしても十分魅力的」と考えているのは間違いないです。よほどカブスにとって条件のよいトレードがない限りは放出もできないでしょうし、カウンセル監督も戦力として十分力を発揮できるような環境を整えるでしょう。

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.2832173.366.84813810.8%27.4%16

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

先日、上原浩治さんのYoutubeに鈴木選手が出演していたのですが、「スプリットの対応に苦戦しているのかな」と思い調べてみたところ、やはりそうでした。他の特徴的な指標も含めて下記の通りです。

  • スプリットについては打率/長打率が .053、.158と全く打てていない。スイーパー、チェンジアップといった球種も苦手。
  • 一方、速球系(ストレート、シンカー、カッター、ツーシームなど)は打率/長打率が .318、.559と滅法強い。
  • 初球はほとんど手を出してこない(鈴木選手の初球スウィング率は13.4%で、200打席以上の選手の中では下から3番目)。
  • 3-1、3-2の成績が非常に良好。

右投手と左投手では鈴木選手への攻め方はだいぶ変わってくるのですが、じっくり勝負をするタイプのバッターなので、ある程度苦手なゾーンに制球して、ストライクを先行させることが投手としては非常に大事。

下記に詳細データありですが、右投手の外角、左投手の高めが2024年の鈴木選手のウィークポイント。

とはいえ、「ダルビッシュ選手はデータをすごく活用される。なので、(初球を打ってこないことをわかっているので)初球を狙ってやろう」とも発言していたので、このあたりのエピソードは研究熱心さも伝わってきます。

鈴木選手を打ち取れる可能性が高いのは、右投手なら外角低めのスプリットかスウィーパー、左投手ならスプリットかチェンジアップ。

これらの勝負球を活かすために、カウント球、見せ球を組み立てていきますが、時には勝負球をあえて早い段階で持ってくるなどの駆け引きは状況に応じて発生します。

ちなみにMLBというと、「力と力の戦い」と思われがちですが、データによる情報戦がその前提にあります。ウィークポイントが判明したら、徹底的に攻められます(鈴木選手の場合、4分の1以上は外角低めのボール球です)。

戦略を実行する技術力はMLBの選手は当然高いので、明らかなウィークポイントを持つ選手は成績が急降下します。このあたりにもMLBへの適応の難しさがあります。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

鈴木選手のスウィングの特徴は、まず、長距離打者にもかかわらず、スウィング軌道が短い(いわゆるコンパクトな振り)ことですね。
鈴木選手は毎年、確実性や選球眼の水準が高いですが、それはこのスウィング軌道の短さによるところは大きいでしょう。

それでいて、バットスピードは速く、自分の形を崩されないようなスウィングをしており、飛距離を出すだけのパワーが備わっていることもわかります。

パワーと技術のバランスがよく、そのことがブラスト・スウィングの指標の高さに現れています。

個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード73.0m/h7071.5m/h
ファスト・スウィング率35.0%5222.6%
スウィング軌道距離7.2ft1467.3ft
スクエア・アップ率25.7%8925.0%
ブラスト・スウィング率13.8%3110.3%
バレル率11.5%38-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者の数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.417.483.7081.191
1-0.333.349.7621.111
2-0.625.625.9381.563
3-0.250.8241.0001.824
0-1.400.387.533.920
1-1.357.349.452.801
2-1.355.355.7741.129
3-1.471.7191.1771.895
0-2.146.146.167.313
1-2.203.213.241.453
2-2.179.177.313.490
3-2.313.549.5671.116

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球+.084+.139+.148+.286
1-0-.005+.006+.179+.186
2-0+.281+.278+.306+.583
3-0-.176-.120+.110-.010
0-1+.075+.053+.020+.073
1-1+.036+.022-.073-.050
2-1+.024+.021+.202+.223
3-1+.132+.020+.553+.572
0-2-.002-.011-.054-.065
1-2+.039+.042-.007+.034
2-2+.009.000+.044+.045
3-2+.122+.096+.239+.336
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball164.265.507.39022.225.6
Sinker129.381.590.46911.117.8
Slider101.269.441.32829.226.7
Changeup52.250.313.28634.838.5
Cutter45.333.644.41318.122.2
Curveball42.256.436.3672323.8
Sweeper26.192.385.24244.257.7
Split-Finger22.053.158.13652.559.1
Slurve----------
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