Mookie Betts ムーキー・ベッツ

MVP獲得経験があるスーパースターにもかかわらず守備位置のコンバート要望に前向きに応える献身的な姿勢を持ち、身体が小柄なせいでいろんな場面で不当に低い評価を受けても母子の絆での乗り越えてMLBまで上り詰めてきたというドラマ性(と裏にあるたゆまぬ努力)もあり、その上、ボウリングでパーフェクトを出してしまうという恐るべき身体能力エピソードまで備えた愛すべき選手です。

チームプレイヤーとしてMLB No.1で、Fantasy baseballの我がチームに第1回選択で迎えたいと思っても、毎年、願いがかなわない大人気の選手です。

このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

目次

概要

2023年度と比較するとやや長打が少なくなった印象はあるものの、OPSは .900近い強打者。

長打の犠牲として三振数が増えるというのが強打者の傾向ですが、そういう傾向とは無縁の三振数の少なさを維持。

そして、三振が少ない打者は早いカウントで勝負していることが多く四球が少なかったりするのですが、これまた傾向とは異なり四球率も高い。

各タイプの打者にありがちな弱点をうまく克服しているミステリアスでパーフェクトな打者です。(スウィングに理由を見出していますが、その説明は後述)。

この不思議な傾向の理由は後述の「スウィング」で紐解いてみます。身体が小柄という不利をさまざまな技術で克服していることが分かります。

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.2891975.372.86314511.8%11.0%16

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

ベッツ選手の傾向をまとめると下記の通りです。

  • 打者有利カウント、投手有利カウント、並行カウントのどの状況でもMLB平均を大きく超える。
  • なぜかフルカウントの成績が悪くMLB平均以下。
  • 例年の傾向としては、速球系は強く、他打者と比較すると極端に苦手な球種はない(オフスピード系はやや成績低い傾向はある)。
  • 2024年に関してはスウィーパー、左投手の外角低めチェンジアップに手を焼いた。

2024年はスウィーパー(コース問わず)と左投手の外角低めチェンジアップに苦労していたため、バッテリーとしてはこれを決め球に考えるケースが多かったはずです。

ただ、ベッツ選手が秀逸なのは、その決め球を活かすための見せ球である内角のストレートは多少ストライクゾーンから外れてもヒットにしてくる点です。

データ上は上述の球種が打てていないとしても、同じ球種を続ければ芯に当ててくる技術はあります。だから、配球が必要になってくるのです。

その技術がないなら、データ上打てないコース・球種を投げ続ければいいだけにゃん。

そしてこの配球を考えるには、各打席のシチュエーション、バッテリー・打者のその時の感情、その試合の過去の打席での配球・伏線などを踏まえねばなりません。

そういう思考の勝負がマウンドーホーム間で行われている。これこそがベースボールの醍醐味ですね。

2024年のベッツ選手のコース別打率を見ると、実はど真ん中が全然打てていないので、思い切ってど真ん中を投げるのもありだったのかも。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

ベッツ選手のスウィングの興味深い点は、キャリアを通じてOPS .900前後を維持できる強打者でありながら、各指標はパドレスのアライズ選手やガーディアンズのクワァン選手のようなコンタクトヒッターのそれに近い点です。

すると、なぜ長打が出るのかということになるのですが、これも上原浩治さんのYoutubeで鈴木選手が言っていたように「どのボールに対してもホームランになる角度がついている」という技術によるものと考えられます。

実際に、MLBのスタットキャストでも、Launch Angleでは20度以上を維持し、Sweet Spot%は2024年度39.3%と規定打席到達者中でMLB12位(2023年度は40%超)という結果が出ています。

加えて、スクエア・アップ率がMLB3位と芯に当てる技術も高いことがわかります。

Sweet Spot%とは打球角度が8度から32度の範囲に入る割合を示す指標です。この角度範囲は打球の価値が最も高くなる領域とされています。

個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード69.0m/h18571.5m/h
ファスト・スウィング率9.6%15922.5%
スウィング軌道距離6.9ft1907.3ft
スクエア・アップ率37.2%325.0%
ブラスト・スウィング率10.4%12510.3%
バレル率6.0%104-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者の数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.371.371.7421.113
1-0.455.455.7581.212
2-0.333.333.611.944
3-01.000
0-1.294.286.412.698
1-1.372.372.7671.140
2-1.417.417.5831.000
3-1.250.643.6501.293
0-2.250.250.361.611
1-2.203.215.328.544
2-2.221.214.294.508
3-2.167.481.229.710

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球+.038+.027+.182+.208
1-0+.117+.112+.175+.287
2-0-.011-.014-.021-.036
3-0--+.056----
0-1-.031-.048-.101-.149
1-1+.051+.045+.242+.289
2-1+.086+.083+.011+.094
3-1-.089-.056+.026-.030
0-2+.102+.093+.140+.233
1-2+.039+.044+.080+.125
2-2+.051+.037+.025+.063
3-2-.024+.028-.099-.070
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball166.292.467.3876.87.2
Sinker105.341.568.4495.85.7
Slider77.314.657.42420.913
Changeup46.163.279.22225.913
Sweeper36.118.235.14030.219.4
Curveball29.250.357.27920.524.1
Cutter32.448.621.48616.76.3
Split-Finger18.353.706.50829.627.8
Knuckleball3.333.333.30066.766.7
Slurve1.000.000.00000
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