Juan Soto フアン・ソト

2024年オフにメッツと15年総額7億6500万ドル(約1147億円)という超大型契約を結びました。しかも同じニューヨークにある球界の盟主ヤンキースからということで、金額だけでなくブランド観点からも歴史的でした。

契約に関する感想はさておき、打撃におけるパワーと技術の卓越したバランス、「ソトシャッフル」と言われる独特なルーティンも含めて、MLB屈指の魅力的な打者であることは間違いないです。

ESPNのJeff Passanとのインタビューで(ジョークも入っていたのかもしれませんが)「MLB史上最高の打者は自分」と言い切れるだけのものがあるのは、特にスウィング指標などからも伺えます。

「(ソト選手)自身を別としたら誰が最高の打者か」という質問に対してはフリーマン選手を挙げていました。このことからソト選手が打撃で何を重視しているかも見えてきそうですね(打球アングル、広角打法、安定性、確実性…)。

このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

目次

概要

19歳のデビュー~この記事執筆時点(2025/4/7)のキャリア出塁率が.420、OPSが.952と若くして熟達した技術を備えた天才打者。どの長期契約も40歳前後に終わるようにしていることを考えると、年齢だけでいえば15年という契約期間も(契約内容と予想される働きが見合うかどうかはさておき)あながちおかしな話ではありません。

守備・走塁の指標は平均以下なのですが、2024年度のbWARは7.9、これまでの通算bWARは36.7と選手としての貢献度は高く、仮にこれまでと同期間で同程度のパフォーマンスが続けば、単純計算でbWARを倍にして73.4。イチローさんの60.0を大きく超え、殿堂入りも見込める数値です。

2024年シーズンの41本塁打はこれまでのキャリアハイです。本来広角に打ち返していくソト選手ですが、2024年に関しては、レフト方向・センター方向・ライト方向への打球比率がそれぞれ21.9%・35.8%・42.3%と例年より打球を引っ張りにかかっていました。ライトスタンドが非常に近いヤンキースタジアムの特性を加味した打撃をしていたと言えるでしょう。

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.28841109.419.98917818.1%16.7%7

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

ソト選手の傾向をまとめると下記の通りです。

  • 自分の身体から離れない高さ・コースに来る球の方が強い。
  • 3ボールカウントでの勝負に持ち込める確率が高い。
  • 極端に苦手にしている球種がないため、投手側からすると勝負球の選択は難しい。

もちろん年によって多少結果が変わることはあるのですが、選球眼がよく極端に苦手な球種もないため、投手は左右・持ち球によらず、攻略が難しい打者の一人と言えます。

上記の傾向を作り上げているのは、ソト選手の超高水準なスウィング指標によるもので、その説明は次のセクションに譲ります。

では、どこから突破口を見つけるか。

これはスウィングの特性にもつながっていくのですが、ソト選手は自分の身体に近いコース・高さのボールに強い傾向があるので、できるだけ遠いところで勝負していく、つまり、外角低めへの配球を基本にするしかなさそうです。

そして、左投手であればスライダー、カーブ、スラーブといったより遠くに逃げていく球種と内角低めへのシンカーなどを組み合わせるのが無難に見えます。

2024年度はジャッジ選手と同じチームでしたが、真ん中から低めに滅法強いジャッジ選手と高めはほぼきっちり打ち返してくるソト選手に並ばれると、バッテリーは相当神経をすり減らしたことと思います(特に投手は繊細な感覚でそれを投げ分けないといけないので…)。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

一般的なパワーヒッターのスウィングは、スウィングは速くて力強いが、その代わりにボールに当たるまでの距離が長いです。

ですが、ソト選手のスウィングは、ボールに当たるまでの距離が長くもないのにスウィングスピードがMLBトップクラスです。

ボールに当たるまでの距離が短くなるというのは、それだけコンタクト能力が上がることにつながります。実際にスクエア・アップ率もMLB上位に入り、そうなれば、ブラスト・スウィング率がMLBトップになることも当然といえば当然です。しかもバレル率まで高い。

スウィング指標についてはMLBでも群を抜いており、今回の契約はその突出した数値と彼の若さに支払われた金額だと考えると納得できなくはない一面が出てきます。

軌道も含めて、スラッガーにしてはスウィングがコンパクトというのが、自分の身体から遠い位置にあるボールが打ちにくいということにつながっているのかもしれません。

2024個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード75.4m/h1371.5m/h
ファスト・スウィング率59.2%1222.5%
スウィング軌道距離7.3ft1207.3ft
スクエア・アップ率31.9%1525.0%
ブラスト・スウィング率20.5%110.3%
バレル率19.7%3-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者の数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.438.446.9731.419
1-0.393.393.8571.250
2-0.333.385.417.801
3-0.714.9261.7142.640
0-1.404.388.8511.239
1-1.352.346.537.883
2-1.265.265.559.824
3-1.500.8821.1252.007
0-2.146.146.293.439
1-2.163.163.263.425
2-2.185.192.391.583
3-2.250.540.446.986

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球+.105+.102+.413+.514
1-0+.055+.050+.274+.325
2-0-.011+.038-.215-.179
3-0+.288-.018+.824+.806
0-1+.079+.054+.338+.392
1-1+.031+.019+.012+.032
2-1-.066-.069-.013-.082
3-1+.161+.183+.501+.684
0-2-.002-.011+.072+.061
1-2-.001-.008+.015+.006
2-2+.015+.015+.122+.138
3-2+.059+.087+.118+.206
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball190.327.747.50518.613.2
Sinker136.374.704.50114.614
Slider94.176.351.32425.521.3
Changeup93.250.447.36229.721.5
Cutter74.274.629.43122.310.8
Curveball50.244.439.38214.716
Sweeper38.310.414.41329.318.4
Split-Finger30.261.261.34329.530
Slurve4.000.000.0005050
データ参照先

「カウント別詳細」のデータは baseballreference.com を参照しています。
「コース別詳細」および「球種別詳細」のデータは baseballsarvant.mlb.com を参照しています。

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