Freddie Freeman フレディ・フリーマン

家族と勝利を愛するドジャースのリーダー。

メジャーデビューから(執筆時点の)2024年までの長い間、攻守に高水準なパフォーマンスを見せ続けたMLBを代表する選手の一人。生涯打率(2010-2024時点)は.300を超え、守備・走塁指標でも一定水準以上を維持しています。

これから年齢的な衰えにも直面すると思いますが、MLBの通算二塁打記録を塗り替える可能性もあります。また、一方で、2024年のワールドシリーズ第1戦の逆転サヨナラ満塁弾を放つなど、記録にも記憶にも残る偉大なプレーヤーです。

このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

目次

概要

2024年は足首の捻挫に肋骨の骨折、さらにマックス君の病気と、心身ともにコントロールが難しい状態でのプレーを余儀なくされました。

そんな中で、打撃部門はOPS .858とリーグ屈指で、守備・走塁についてもチームにマイナスを与えないように懸命に取り組んでいたと言えます。

このフリーマンという選手の凄みは攻守両面における高度な野球技術を持っているところにあります。少なくともMLB.comが提供するスタットキャストの数値を見る限り、身体能力の優位性は感じません。バッティングについては、このあとの「スウィング」でその技術を確認しましょう。

スタットキャストによると、2024年のフリーマン選手のスプリント能力、肩の強さは下記の通りでした。

  • スプリント能力:566人中486位
  • 肩の強さ:388人中339位
打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.2822289.378.85414312.2%15.7%9

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

フリーマン選手の傾向をまとめると下記の通りです。

  • 打者有利カウント、投手有利カウント、並行カウントのどの状況でもMLB平均を大きく超える。
  • 高い四球率のイメージには反するが、初球から仕掛けてくるケースも多い。が、2024年度はその初球の打撃成績はMLB平均より低かった。
  • 苦手な球種はほぼない(あえて言えばスプリット)。
  • スウィング軌道の問題からか、2024年に限らず、高めのボールは少し苦手な傾向あり。
  • 左投手の方がやや打撃成績は低い(といっても、2015年から2024年の成績で見たら、.280は打ってますけどね…)。

2024年だけで言えば、右投手の内角高め、左投手の外角低めに苦手な傾向はありましたが、それ以前の成績も考慮すると、フリーマン選手はほとんど苦手なコースがなく、かつ、苦手な球種もないという特異な結果が出ています。

実際、2024年のワールドシリーズではその苦手なコースに来た球もホームランにしちゃってるにゃん。

「バッテリーとしてこれだけ投球の組み立てに困る打者もいないのでは?」とも感じます。

一番打たれる確率が低そう、かつ、(ミスの仕方によるものの)コントロースミスをしても痛手になりにくいということから、高めのストレートを選択するのが無難ではありそうです。特にホップ成分の高いストレートを持っている投手ならその選択肢が有力でしょう。

あとは、スプリットやスイーパー、スライダーといった比較的打てていない球種を織り交ぜたり、ボール球にしてみたり…

打席において穴のない打者とはまさにこういう人のことを言うのだと感じます。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

スウィング指標については、フリーマン選手とベッツ選手の傾向が似ています(MLBを通じてみると少ないですが、ドジャースには集まっている)。

つまり、OPS .900前後を維持できる強打者にもかかわらず、スウィングはコンタクトヒッター寄りの指標になっているということです。

ベッツ選手の項では長打を出す技術として「角度」と「芯に当てること」に言及しましたが、フリーマン選手の技術は「グラウンドの広角にいい角度の打球を飛ばす」ことにあると言えます。

フリーマン選手は、Sweet Spot%という指標において、2022年~2024年で3年連続MLBトップです。

飛距離の最大化という観点ではバレルという指標がよく使われますが、打率の最大化も考慮したうえで質の高い打球を出し続けるという意味ではこのSweet Spot%が有効で、その指標において3年続けてトップを取っていることは、類まれな打撃技術の証明となるでしょう。

Sweet Spot%とは打球角度が8度~32度の範囲に入る割合を示す指標です。この角度範囲は打球の価値が最も高くなる領域とされています。

個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード69.8m/h17171.5m/h
ファスト・スウィング率9.7%15622.5%
スウィング軌道距離6.8ft2007.3ft
スクエア・アップ率27.7%6625.0%
ブラスト・スウィング率10.9%12410.3%
バレル率9.1%60-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者の数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.272.287.506.794
1-0.441.441.6771.118
2-0.474.4741.1051.579
3-0.667.9521.6672.619
0-1.304.319.565.884
1-1.311.298.511.809
2-1.393.379.6431.022
3-1.412.744.8241.567
0-2.188.184.292.475
1-2.207.244.281.525
2-2.192.200.233.433
3-2.288.552.5001.052

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球-.061-.057-.054-.111
1-0+.103+.098+.094+.193
2-0+.130+.127+.473+.599
3-0+.241+.008+.777+.785
0-1-.021-.015+.052+.037
1-1-.010-.029-.014-.042
2-1+.062+.045+.071+.116
3-1+.073+.045+.200+.244
0-2+.040+.027+.071+.097
1-2+.043+.073+.033+.106
2-2+.022+.023-.036-.012
3-2+.097+.099+.172+.272
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball213.306.559.39316.515.5
Sinker119.257.386.33611.56.7
Slider80.254.358.32834.727.5
Changeup48.308.513.40127.510.4
Cutter59.286.411.32223.520.3
Curveball49.244.512.38022.716.3
Sweeper38.353.618.44222.121.1
Split-Finger19.133.133.33719.415.8
Knuckleball3.3331.333.6672533.3
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