Masataka Yoshida 吉田正尚

マッチョマンの愛称に違わぬフォロースルーの大きいダイナミックなスウィングをしながらも、コンタクト技術も兼ね備えた稀有なバッター。2023WBC準決勝メキシコ戦での同点スリーランは感動的だった。

このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

目次

概要

2023年、2024年とMLB平均以上のOPS+を叩き出し、三振も少なくコンタクト能力が高いことが分かります。

DHにしてはパワーがないと言われますが、日本時代の成績から判断すれば本塁打が10~15本になることはある程度予想できたことではないかとも思います。

筆者の個人的な成績の目安は「メジャー1年目は打率5分、本塁打20本程度、日本時代から下がる」です。

おそらく長打を増やすことを目的に試行錯誤していたように見えました(シーズン序盤は左手の手首をちょっと内側に曲げて打球に角度と強さを求めていたのではないかと)。ですが、数字が残らず、シーズン途中から2023年のスタイルに戻して、そこから打率を上げていきました。

結果は伴わずとも、メジャーの投手に適応しようとするこの姿勢が吉田選手を好打者たらしめている要素ではあります。

加えて、右肩の怪我、不規則な起用など順風満帆なシーズンとは言えなかったと思いますが、打率を .280で維持しているのはさすがと言えます。

長打にこだわりがあると思うのですが、美しいスイングを持ち、かつ、コンタクト能力が抜群なので、個人的にはジョー・マウアー選手やマイケル・ブラントリー選手(どちらも筆者が大好きな選手)のように、高打率、高出塁率を保持しながら外野の間を速い打球で抜くスタイルで行ってほしいとも思っています。

OPS .820~.830程度は稼げるはずなので、それでチームには十分貢献できるはず。

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.2801056.349.7651126.4%12.4%2

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

吉田選手が何かのTVインタビューの中で「日本時代より早いカウントから積極的に打ちに行っている」とコメントしたのですが、確かに初球のヒッティング率が上がっています(10.7%。参考値として大谷選手が11.9%)。それでもMLB平均よりは低いですが…

  • 実際に初球を打ちに行った時の成績はMLB平均を大きく上回る。
  • 速球系が強く、ブレーキング系がやや苦手という傾向は例年変わっていないが、2024年はそのブレーキング系を長打にできなかった。
  • 一方、カッターに対する成績は大きく向上させ、メジャーリーグへの適応を見せている。
  • 2024年は対左投手成績が急降下(詳細は後述)。

吉田選手の起用が不規則になった原因は、ほぼ間違いなく対左投手の成績の悪化です。

2023年は対左投手打率 .273だったのが、2024年は .191。結果、打席数ももらえなくなっていきました。

急落の原因は吉田選手の技術的問題ではなく、MLB各チームの研究にあります。

2023年から実は左投手の外角低めが全く打てていなかったのですが、2024年は徹底的にそこを突かれました。下の「コース別詳細」でもわかりますが、左投手の外角低めはストライクでも少し外れても .000です。2023年の打率が高かったのはベルト付近より上の高さのボールを打てていたからで、2024年はそこに投げてもらえなくなりました。

右投手の場合、ストライクゾーンはどこでも合わせてくるので、相当神経を使って緩急をつけていかないと吉田投手を抑えられないです。

一方、左投手の場合は外角低めにスイーパー、スライダー、スプリットあたりを投げればOKという絶対的な攻略法があるので、2025年はこのボールを攻略しないとプラトーン要員にまで格下げされてしまう恐れもあります。

筆者は美しいスムーズなスウィングをする選手が非常に好きなので、吉田選手の巻き返しを強く願っています。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

吉田選手は本質的にアベレージヒッターと思っていますが、結果としてもスクエア・アップ率の高さに出ています。

2024年の数値で「やっぱり右肩の怪我の影響があったのかな」と思わせるのが平均バットスピードでMLB平均を割ってしまいました(2023年は71.4m/h)。

手術後の経過がよければ、2025年はバットスピードが上がり(上がってもスクエア・アップ率などが落ちないのは2023年に証明済)、この2年のメジャーリーグでの経験も加味されて、好成績を残せそうです。

個人MLB平均
平均バットスピード70.9m/h71.5m/h
ファスト・スウィング率15.2%22.6%
スウィング軌道距離7.3ft7.3ft
スクエア・アップ率30.1%25.0%
ブラスト・スウィング率11.7%10.3%
バレル率5.5%-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者の数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.462.533.8461.380
1-0.250.281.393.674
2-0.546.546.8181.364
3-0-1.000--
0-1.227.244.364.608
1-1.389.421.5831.004
2-1.400.400.440.840
3-1.286.600.7141.314
0-2.138.194.138.331
1-2.197.208.211.420
2-2.245.245.327.571
3-2.219.419.344.762

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球+.129+.189+.286+.475
1-0-.088-.062-.190-.251
2-0+.202+.199+.186+.384
3-0--+.056----
0-1-.098-.090-.149-.239
1-1+.068+.094+.058+.153
2-1+.069+.066-.132-.066
3-1-.053-.099+.090-.009
0-2-.010+.037-.083-.047
1-2+.033+.037-.037+.001
2-2+.075+.068+.058+.126
3-2+.028-.034+.016-.018
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball124.288.442.3739.111.3
Sinker89.325.481.3967.12.2
Slider50.250.273.28921.114
Cutter41.333.564.42114.17.3
Curveball34.212.333.24926.229.4
Changeup37.306.417.32424.616.2
Split-Finger25.200.360.2741916
Sweeper20.158.158.17013.830
Knuckleball------0--
Slurve------0--
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