Shohei Ohtani 大谷翔平

少年時代の憧れは松井秀喜とダルビッシュ有。メジャーリーグを夢見る野球少年にこの2人が影響を与えていたことを思うと、世代的にはひときわうれしい。

このブログでは打者の特性や対応能力を探ることでTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

目次

概要

世界で唯一無二の二刀流プレイヤーで、打者に専念した2024年には前人未到の50-50を達成したスーパースター。
2024年度の打者成績は異次元で、この後に記載するスウィング指標でもMLBで指折りの数値を叩き出しています。

身体能力もさることながら、細かな技術の向上やデータ活用にも相当力を入れていると感じます(狙い球の絞り方、走塁、盗塁のタイミングなど)。例えば、足自体はそこまで速くないのに(スプリントの順位はMLB158位)、ホームから一塁到達時間はMLB18位で、盗塁も59というのは高度な技術がないとできない記録です。

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.31054 (NL1st)130 (NL1st).390 (NL1st)1.036 (NL1st)19011.1%22.2%59

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

0ストライク、1ストライクの成績はモンスター級。

  • 0ストライクの打率/出塁率/長打率は .448/.539/1.022
  • 1ストライクの打率/出塁率/長打率は .427/.506/.860

それほど左投手を苦手にしている様子はないですが、とにかく対右投手は打ちまくっています(対右投手のwOBA(.440を超えたら超優秀)は .460)。

右投手で打てていないのは外角高めなので、ストレートの質がよい場合は高めに投げ込むことがファーストチョイスでしょう。ここで失投しなければ優位に持っていけます。

簡単に「失投」と書いてしまっていますが、そもそも内外投げ分けるだけでも相当の技術ですけどね。

ストレートの質がそれほど高くない右投手はなかなか攻め手がないですね。内角低め、外角低めのボール球で空振りを取りに行くしかなさそうです。

とはいえ、ストレートを投げないわけにもいかないので(裏をかいて全部変化球も時折はあっても)、どこかで1、2球は挟むことをバッテリーは考えるわけですが、ここは大谷選手を観察して判断するしかないですね。

左投手に対しては高めの外れた球も対応されるので、外角低めでカウントを取る、勝負をする、そのために見せ球をどのコースにどの球種で行くかを考えることになります。投手のタイプに応じた発想になるでしょう。

大谷選手の唯一の泣き所はスイーパー(あとあえて言えばカッター)。この球種が得意な投手は攻略の糸口がつかみやすそうには見えます(地区シリーズでのダルビッシュ投手はうまく攻略していましたね)。

2ストライクで打撃成績を下げるのは他の打者と同じ傾向で、打率/出塁率/長打率は .203/.276/.403。

ちなみに、3-0ではなんと打率10割、打撃結果はほぼ四球で勝負を完全に避けられています。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

大谷選手のスウィング指標は下記の通り。

大谷選手のスウィングで傑出しているのは、平均バットスピードやファスト・スウィング率がパワーヒッターの傾向にありながら、スクエア・アップ率がMLB平均以上と芯に当てる技術も兼ね備えていること。結果、ブラスト・スウィング率(バットスピードが速く、かつ、スクエア・アップ・スウィングで打てた)の指標が良好。

個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード76.3m/h871.5m/h
ファスト・スウィング率64.1%822.6%
スウィング軌道距離7.8ft277.3ft
スクエア・アップ率26.3%8225.0%
ブラスト・スウィング率17.8%810.3%
バレル率21.5%2-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったら難攻不落の大谷選手の1ストライク、2ストライクをどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者の数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.390.395.8171.212
1-0.500.4871.2111.698
2-0.583.5831.5002.083
3-01.0001.0003.0004.000
0-1.344.339.625.964
1-1.447.438.9361.374
2-1.579.5901.2111.800
3-1.250.807.6251.432
0-2.106.125.255.380
1-2.194.209.444.654
2-2.243.243.374.617
3-2.217.444.470.914

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球+.057+.051+.257+.307
1-0+.162+.144+.628+.773
2-0+.239+.236+.868+1.103
3-0+.574+.056+2.110+2.166
0-1+.019+.005+.112+.117
1-1+.126+.111+.411+.523
2-1+.248+.256+.639+.894
3-1-.089+.108+.001+.109
0-2-.042-.032+.034+.002
1-2+.030+.038+.196+.235
2-2+.073+.066+.105+.172
3-2+.026-.009+.142+.134
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball201.287.611.43627.721.9
Slider122.318.827.4944026.2
Sinker127.351.559.43715.217.3
Changeup73.318.621.41628.415.1
Cutter68.279.492.35929.211.8
Curveball56.314.745.47537.437.5
Sweeper37.147.265.22334.837.8
Split-Finger34.4411.000.59932.329.4
Knuckleball2.000.000.35000.0
Slurve------0--
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