Teoscar Hernández テオスカー・ヘルナンデス

ホームランセレブレーションではベンチ前でヒマワリの種を投げまくる(グラウンド上の姿を見る限りは)陽気なドミニカン。笑顔と勝負強い打撃が魅力の外野手で、2024年度の戦いにおいてチームを幾度となく救っていました。

2024年度オフに3年6600万ドルで残留が決まった時のチームメイトの反応を見ると、チームにもファンにも愛されている選手なのだと感じます。

このブログではTV中継のバッテリーの攻防をより面白いものに感じられるような情報を提供します。

目次

概要

例年、30本前後の本塁打を期待できるパワーヒッター。空振り率はMLBワースト6位(規定打席到達者中)ではあるものの、スイングの力は強く、広角に打球を飛ばすことができるため、打率はそこまで低くありません。

そして、キャリアを通じてスコアリングポジションに走者がいる場面の方が成績がよく(.OPSが+100前後)、シーズンは後半に向けて成績を上げていくタイプなので、優勝を争うチームでは相当頼りになる打者と言えます。

また、強肩俊足と身体能力が高く、盗塁も2桁決めていたりします(しかも盗塁成功率は80%)。ただ、守備範囲だけはどうにも狭いのですが…

打率本塁打打点出塁率OPS+OPSBB%K%盗塁
.2723399.339.8401378.1%28.8%12

カウント別

MLB打者の平均的傾向 2ストライクでの打撃成績は打率・出塁率・長打率すべてで急降下

  • 各ストライクでの打率/出塁率/長打率
    • 0ストライク .336/.390/.577
    • 1ストライク .326/.391/.538
    • 2ストライク .168/.244/.264

テオスカー・ヘルナンデス選手の傾向をまとめると下記の通りです。

  • 初球および1ボール・0ストライクでの成績がMLB平均と比較して非常に高い。
  • 対右投手と対左投手ではコースの得意・苦手がまるっきり変わってくる。
  • 2024年度は引っ張った打球がややゴロの打球になっていた。
  • シーズンによって少し差はあるものの、遅い球への対応が非常に優れている。

自分の身体に向かってくる球種には非常に強いため、右投手よりも左投手の方を得意としています(ただプラトーン要員にするほど右投手が打てないわけでは全くないです)。

一般的に投手の持ち球は自分の利き腕から反対の腕側に曲がっていくものが多いです。ですので、右打者の場合、左投手との対戦では自分の身体に向かってくる球が多くなります。

また、遅い球に対してはかなり強く、それを相手も分かっているので、遅い球に分類される球種の投球割合も低いですね。

2024年は左投手の真ん中からやや内よりの速球系に手こずっていましたが、キャリア全体を見ると少し外れ値のようで、実際に苦手にしているのは、バットから逃げていく右投手の外角低めに向かう球と、右左にかかわらずインコースの厳しいところに向かってきた後に少し身体から離れるような変化をする球(右投手のインコースのカットボール、左投手のインコースのシンカー)です。

必要以上に緩急をつけようとせずに、インコース・アウトコースの出し入れで組み立てていくのが無難なように思えます。

スウィング

MLB.comが提供するスタットキャストに2024年5月に追加された「バット・トラッキング」から抜粋しています(用語の説明は別途)。

順位が高いほうがよいものももちろんありますが、各選手のスウィングの個性が現れます。

スウィングの個性が現れた例

大振りパワーヒッターの典型であるスタントン選手とこれまた安打製造機の典型であるアライズ選手の比較がこちら。

スウィングにパワーを持たせたいスタントン選手は平均バット・スピード、ファスト・スウィング率(75マイル/h以上のスウィング)でMLBトップの数字であるが、コンパクトなスウィングでバットの芯(スウィートスポット)に当てることに長けたアライズ選手はなんと平均バット・スピード、ファスト・スウィング率でMLB最下位。

一方、どれだけ芯に近い場所で打つことができたかを示すスクエア・アップ率はアライズ選手がMLBトップで、スタントン選手はMLB平均以下。

ちなみに、ボールに当たるまでのスウィングの距離を測る「スウィング軌道距離」でも、スタントン選手がMLB最長、アライズ選手がMLB最短と両極端な個性が指標から読み取れます。

平均バットスピードファストスウィング率スウィング軌道距離スクエアアップ率
スタントン81.3m/h98.7%8.6ft20.8%
アライズ63.2m/h0.3%6.0ft43.9%

スウィングスピード、ブラストスウィングが高く、ハードヒットした打球をグラウンドの全方向に飛ばしていくというヘルナンデス選手の持ち味がしっかりと表れている数値です。

そして、目を引くのがバレル率の高さ。今年も10位で、かつ、例年高い数値を維持しているので、単なるハードヒットではなく、ホームランになりうる強い飛球を打つ技術を持っているということですね。

ドジャース強力打線の怖さは単純な成績だけでなく、打者の多様性にもあると筆者は感じています。同じような打者には同じような球種・コースを投げることになるので、MLBクラスの投手の技術があれば、再現性高く対策を実行できるから、というのがその理由です。

2024個人MLB順位MLB平均
平均バットスピード73.2m/h5971.5m/h
ファスト・スウィング率31.7%6522.5%
スウィング軌道距離7.8ft267.3ft
スクエア・アップ率19.9%20125.0%
ブラスト・スウィング率12.5%5710.3%
バレル率14.9%10-

詳細データ

上に書いた内容のエビデンスデータを記載しています。
このデータを使って、「自分だったらどの球種、どのコースで取るか」を考えていただくのも野球の1つの楽しみ方だと思います(もちろん走者の数や投手の持ち球によって変わりますけどね)。

カウント別詳細

個人

カウント別打率出塁率長打率OPS
初球.440.455.8531.308
1-0.444.4291.0371.466
2-0.400.400.6001.000
3-0.000.938.000.938
0-1.333.333.6671.000
1-1.324.324.460.784
2-1.324.343.647.990
3-1.333.818.3331.152
0-2.200.214.273.487
1-2.162.170.239.409
2-2.260.278.496.774
3-2.164.386.377.763

MLB平均との差

平均との差打率出塁率長打率OPS
初球+.107+.111+.293+.403
1-0+.106+.086+.454+.541
2-0+.056+.053-.032+.020
3-0--------
0-1+.008-.001+.154+.153
1-1+.003-.003-.065-.067
2-1-.007+.009+.075+.084
3-1-.006+.119-.291-.171
0-2+.052+.057+.052+.109
1-2-.002-.001-.009-.010
2-2+.090+.101+.227+.329
3-2-.027-.067+.049-.017
コース別詳細

対右投手

対左投手

球種別詳細
球種打席数打率長打率wOBA空振り%K%
4-Seam Fastball161.245.448.34531.131.7
Sinker130.360.523.43217.712.3
Slider129.216.432.28645.936.4
Sweeper42.231.436.35541.442.9
Curveball57.304.732.43431.529.8
Changeup70.328.656.46442.130
Cutter37.267.500.40136.418.9
Split-Finger17.125.188.16852.952.9
Knuckleball4.000.000.00033.350
Slurve11.0001.000.90000
データ参照先

「カウント別詳細」のデータは baseballreference.com を参照しています。
「コース別詳細」および「球種別詳細」のデータは baseballsarvant.mlb.com を参照しています。

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